東京都銃砲刀剣類登録審査会の手続きが変更に 文化財保護担当官らを招き説明会開催
この四月からの東京都銃砲刀剣類登録審査会の手続きに関して変更があり、全国刀剣商業協同組合では去る二月十七日、その説明会を東京美術倶楽部において開催しました。講師として都教育庁から地域教育支援部管理課課長補佐(文化財保護係長)の大畑浩子様と、同文化財保護担当官の小森勉様においでいただきました。
八十名を超える組合員・賛助会員参集の下、深海理事長の挨拶に続き、清水専務理事の進行により前半は変更の骨子について説明をいただき、後半は質疑応答の時間を設けることとして、説明会が始まりました。
新年度から新たに導入が予定される審査の手順は別表の通りですが、今回の変更で便利になったところがあります。まず、来庁者が長い時間待つことなしに審査を受けられるよう、完全予約制(時間指定)を導入し、審査時間に合わせて集合すればよいこと。遅刻等については、事前連絡があれば配慮するとのことです。
また、一般の方が休暇を取らなくても来庁できるように、今まで平日に行われていた刀剣類登録審査を毎月第三土曜日、古式銃砲の登録を奇数月の第三土曜日(ただし五月と十月のみいずれも第三日曜日)のそれぞれ午前十時~午後三時に開催することになりました。なお輸入刀剣の審査は、国際郵便局で毎月第二火曜日に行うとのことです。
都庁審査•国際郵便局審査ともに審査物件数が著しく多いときは、審査委貴を増員して対応していただけるそうです。
以上のような対応には時間的猶予も必要であるため、審査文書類は審査月の前月末日までに文化財保護係に提出しなくてはなりません。申請に必要な書類は東京都教育委員会のホームページからも入手できます。
今回の変更により、申請者が計画的に申請を進めないと審査が受けられない場合もあり得ます。輸入等についても同様で、場合によっては荷物の保留期間が長くなることになりますので注意が必要です。
説明の後、変更内容について、また新期の登録と所有者変更届け出に関する疑問点など、いろいろと組合員からの質問があり、両講師より丁寧にお答えいただきました。
特に関心が高かったのは、古い登録証に多く見られるように、登録発行時の行政側のミスによって、記載内容と実際が一致しないという問題でした。
全くの善意で所有者変更居を申請した者が、審査時のミスのために届け出を拒否され所有者変更が行えなかったり、極端な場合には改ざんを疑われ、登録の所在を全国照会したり、また警察に相談したりすることで、多くの時間と労力を費やしてしまうことになります。正しく変更届を出して、刀を正規に流通させようとしているのに、時には新現登録料や書き換えのための費用まで負担させられたり、全く責任がない私たちに不利益が転嫁されたりしているのが実情でもあります。
教育庁側からは、登録物件、登録証の記載内容、都庁保管の台帳の三点が一致しなくてはならず、古い登録証の役所側の記載漏れや記載ミスに関しても、原則として安易な再交付はしないでほしいと、警察から要請されている旨の説明がありました。
私たち全国刀剣商業協同組合は、小冊子「やさしいかたな」などを通して、長年かけ、刀剣を所持するすべての人々に、刀剣類を所持する場合は必ず所持者の名義変更をしなければならないこと等を啓蒙してきました。刀を所持したら、法令に従って必ず所有者変更の届け出をするという原則を徹底させてきた「やさしいかたな」の功績は誠に大きいのですが、このことによって届け出が増えて、都道府県の対応が後出に回っていることも否定できない事実のようです。
私たちが扱う刀剣類は美術品です。事件などで使用される凶器に美術的価値が高いものはありません。日本刀は日本の大切な文化遺産なのです。銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)については、条文やその運用が変更される度に、私たちは悩まされています。
例えば、刃渡り一五センチ以内の刀剣類は過去には登録が不要でしたが、最近では五.五センチ以上一五センチ未満であっても登録が必要とされています。また、小刀でも登録が必要なものがあるそうで、実際に立件された収集家がいると聞きます。びっくりされる方も多いことでしょう。この日の説明によりますと普通、小刀には茎孔がありませんが、元重ねが二.五ミリを超えるものは刀剣類として登録しなければならないということです。あまり知られていない話です。
このような案件は、すべての都道府県で同じ基準で執行されているのか疑問です。
文化庁が主導し、全国の教育委員会の銃砲刀剣類登録担当者が一堂に会する機会を設け、登録の基準を明確に定める作業が今、必要なのではないでしょうか。行政には一層努力していただき、さらには登録業務に関わる文化庁・教育委員会・警察の三者間で発展的な話し合いが持たれることを期待します。
説明会は一時間二十分にわたり、熱気にあふれたものとなりました。最後に理事長が、組合員を代表して、「登録審査の手続きが改善されることは大変ありがたいことです。次は、所有者変更手続きの円滑化を推進していただきたいと思います。変更の届け出をするものの側には何の責任もないはずなのに、登録時の誤記、脱字、寸法の測り違い、入力ミスなどのために変更届が受理されないようなことがないようにしていただきたい。取り締まりが主眼の警察行政サイドではなく、文化財保護の文化行政の立場から刀を見つめてほしいものです」との意見を述べ、閉会となりました。
お忙しい中ご来会いただき、銃砲刀剣類登録審査について懇切丁寧なご説明をしてくださった大畑様・小森様には、誠にありがとうございました。
私たち全国刀剣商業協同組合では、順法精神に則り、さらに簡潔でスムーズな登録審査が行われる環境が整えられるよう、お手伝いをさせていただければと切望します。 (生野正)
《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第16号」(2014年3月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》