「大刀剣市」カタログ制作夏の陣物語
「大刀剣市」のカタログ制作は、毎年夏の暑い盛りに始まります。
従来は、撮影される商品は交換会会場で集荷され、大刀剣市実行委員会と青年部が撮影場所に運び、そして撮影後に返送または手渡しで返却していました。
しかし、高額な商品の破損や紛失、撮影中に起こり得る事故などを考えた場合、組合が弁償しきれるものではないし、集荷と輸送に伴うトラブルについては、作業に携わる誰もが常に心配していました。
この集荷に関する業務については本年度から、出店者自らが、刀装・刀装具などは撮影会場の組合事務所に、刀身は藤代スタジオへ、甲冑は大石カメラヘ持ち込むという方法に変更されました。自ら品物を運んで、刀剣以外の品なら撮影にも立ち会うこともできるわけですから当然、事故の可能性は下がり、紛失や取り違えの心配もなくなります。
今まで事故が起きなかったことは、むしろ不思議なくらいです。遠方の出店者の皆さんにはご苦労が多くなってしまったとお察ししますが、ご協力により、また一つ問題を解決できましたことは大きな成果です。
この変更に伴い、新しく導入されたことがもう一点あります。それは出店者が自ら商品を撮影し、データを印刷所に持ち込むことが可能になったことです。まちまちな撮影環境により、写真の統一性がなくなってしまうのではないか、結果としてカタログのクオリティが低下してしまうのではないか、などの心配も聞かれましたが、出来上がったカタログを見る限り見苦しい箇所はありません。他店と違う写真であることは、それはそれで個性であり、オリジナリティーでもあると考えるのが良かろうかと思いました。
来年、再来年と年々写真に工夫がなされて一段と進化・成長していくことを切に望むところです。
さて、今回の撮影は七月八日から組合事務所と藤代スタジオ、大石カメラの三カ所で始まりました。
組合事務所の現場には、周りの景色が商品に写り込まないように、あるいは自然な光線で写せるようにと工夫を疑らしたセットが設置されました。カメラマンと助手、印刷所の社員二名、実行委員スタッフと出店者らが顔をそろえ、緊張の作業のスタートです。出店者からも商品の配置、強調する部分など、撮影の要望を聞きながらアングルを決めます。万一、商品を傷つけたり破損させては大変なことですから、細心の注意が払われます。
このようにして、刀装・刀装具の撮影が延べ六日間、刀身の撮影はーカ月にわたり行われました。
八月九日、最初の編集会議が組合事務所で開かれました。
その後の編集作業を経て、校正は印刷所での出張校正です。九月十三日に初校、その三日後の十六日にはもう再校でした。
この間はカタログ編集委員も印刷所も団結の精神で、細部にわたってチェックを行います。何しろ大刀剣市開催の一月前にカタログの発行を予定しているので、少しの油断も許されません。それでも九月十六日の再校で、凡ミスとも言える間違いが発見されるなど、完璧を期すことの難しさをしみじみ惑じさせられました。
さらに、今回から個人撮影の写真が採用されたこともあり、九月二十七日の色校正も困難を極めました。暗かったり明るすぎたり、照明の具合によっては赤く写っていたり、青く写っていたり。これらを統一性を持たせて修正するには、経験と勘に頼るところが多かったと思います。
九月二十九日の念校をもって長かったカタログ制作の作業は終了となり、いよいよ印刷から製本という最終工程に入りました。実行委員全員が大きな間違いがないことを願って、完成したカタログが届くまで気が気ではありません。出来上がったカタログを手にした時は本当に嬉しいものです。ホッとした気分にもなります。
少しでもきれいに、完成度の高いカタログを作ろうという熱意で担当委員は働いています。今年も暑い夏が訪れるころには、また大刀剣市の準備が始まりますので、皆さまのご指導とご協力を願いしたいと思います。 (生野正)
《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第33号」(2017年1月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》