組合交換会 支える人と支えられる会と
組合交換会 支える人と支えられる会と
組合主催の交換会は毎月一回、盛夏の時期を除き十七日に東京美術倶楽部で行われています。全国から組合員が持ち寄る刀を競り合って売買します。
猛暑の気配が迫る七月十七日も各地から多くの組合員が集まりました。空港から駆けつける方、新幹線で来られる方、本当にご苦労さまです。
発句は組合の理事が交代で務めますが、今日は深海理事長が務められ、「さあ始めましょうか」の掛け声と短い挨拶の後、早速競りに入りました。競人の役は飯田慶雄新理事が務めます。
市場の習慣で、始まりと終わりには全員揃って手締めが行われます。組合交換会は一本締め(三回・三回・三回・一回)です。一般の方には馴染みがないでしょうが、手打ちによって締めるーこれは大変面白い習慣だと思います。この主旨は、行事を取り仕切る者が始まりに安全と成功を祈願する、締めでは無事に終了した事を協力者に感謝することにあるのだと思います。
売りの順番は市場によりくじで決めることもありますが、組合では来場順になっており、午前十時の開始に備え、早朝から会場の前に並ぶ姿が見られるのはそのためです。遠方から来られる会員の中には都内に前泊され、朝一番に並ぶ方もおられます。
発句すなわち最初の値付けは非常に難しく、品物を見る確かな目が求められます。安すぎる発句では値が上がりにくく、また高すぎた場合にはお客がつきません。痒いところに手が届くような、おお~っと皆を納得させる発句ができるには長い年月と経験、そして才覚が必要なわけです。
昼休みは別室に移り、みんなで弁当を頂きます。毎回何種類かの弁当が用意され、お好みを選びます。この時間も交換会の楽しみの一つで、お茶を注ぎ合いながら、商売上の情報交換やら、趣味のゴルフに話の花が咲きます。
昼食を終えた会員は、本日の最後に競りが行われる組合買い付け商品を入念に検討しています。
これらの生ぶ品は、清水専務理事・嶋田常務理事・服部福理事長ら組合の役員が遠く足を延ばし、組合のために集めた品々なのです。ご自身の仕事を休んでお客様を訪ね、お取引いただいて持ち帰った品物であることを、皆さんはご存じでしょうか?
先の組合総会で、買い付けに要する費用がいかにも不釣り合いに高額であるかのような質問が出されましたが、全く的外れの認識です。自分がああした、こうしたと自慢することなど一切なく、組合のため、刀剣業界のために献身的に働いて働いておられる方々に私たちは感謝の気持ちを持つべきでしょう。
当日はこれら多くの生ぶ買い付け品のおかげもあって、活発な売り買いが行われ、上々な数字となりました。もしかしたら、大満足な組合員の笑顔が見られたことが、買い付け人へのささやかな報酬だったのかもしれません。(生野 正)
《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第49号」(2019年9月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》