私が出会った珍品〈河童図鍔〉
私が出会った珍品〈河童図鍔〉
何とも面白い、河童を画題にした江戸時代の鍔です。古い時代の掛軸や絵巻物に幽霊画や地獄絵図の類を見ることがありますが、本作のように妖怪や幽霊を武具のデザインとして用いた作品はきわめて稀であり、それらの現存作品はほぼ皆無であると言えます。
私が本作に出会ったのは、五年ほど前。ご縁あって某武具コレクターから宝物として大切にしているという河童図鍔を見せていただくことになりました。
私は一目見て、言い知れぬ感動を覚えました。帰ってから数日間、作を思い出すたびに欲しくなり、後日お願いしたところ、運良く譲っていただけました。鍔を手にして足取りも軽く、帰路に着いたことを思い出しましす。以来、この鍔の河童が可愛くて、日々眺めては楽しんでおります。
作品は、河童が左手にススキの枝を持って月夜の川原に立ち、手招きをしている様子を、鉄地に金銀象嵌高彫によって表しています。
河童というと思い出すのが、某酒造メーカーのキャラクターのように愛嬌ある可愛いものです。ところが、本鍔の河童と見比べてください。江戸時代の河童は口が大きく、鋭い歯が光っています。目も大きく、怖いです。腕一面に鱗があります。足の指は四本。手の指数は確認できません。この姿ならば、誰が見ても立派な妖怪、まさに化け物ですね。
古来より、日本各地には河童伝説なるものがあります。それらを研究していく上で、この河童鍔は重要な資料となることでしょう。『刀剣界』を通して、全国の皆様に江戸時代の河童さんをご紹介できましたこと嬉しく思います。
【解説・河童について】
河童は、かつて北は青森から南は九州の鹿児島まで、全国の至るところの川に生息していたとされます。もともとは水神の使いであったものが、水神信仰が廃れて妖怪に化してしまったものだとも言われています。
古来伝承される日本の妖怪の中で最も有名なものの一つで、その姿がひょうきん、ユーモラスであり、世代を超えた親しみ深さがあります。
現在でも各地に河童信仰や河童伝説が数多く残っており、一面では「良くないもの=不幸」を水中に引っ張り込んで、そのおかげをもって「不幸退散」「幸福招来」がかなうと信じられています。ほかに商売繁盛・金運向上・水難防止・火災防止・縁結び・子授け・安産のご利益があるとも言われています。 (生野 正)
縦7cm×横6cm
《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第6号」(2012年7月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》
何とも面白い、河童を画題にした江戸時代の鍔です。古い時代の掛軸や絵巻物に幽霊画や地獄絵図の類を見ることがありますが、本作のように妖怪や幽霊を武具のデザインとして用いた作品はきわめて稀であり、それらの現存作品はほぼ皆無であると言えます。
私が本作に出会ったのは、五年ほど前。ご縁あって某武具コレクターから宝物として大切にしているという河童図鍔を見せていただくことになりました。
私は一目見て、言い知れぬ感動を覚えました。帰ってから数日間、作を思い出すたびに欲しくなり、後日お願いしたところ、運良く譲っていただけました。鍔を手にして足取りも軽く、帰路に着いたことを思い出しましす。以来、この鍔の河童が可愛くて、日々眺めては楽しんでおります。
作品は、河童が左手にススキの枝を持って月夜の川原に立ち、手招きをしている様子を、鉄地に金銀象嵌高彫によって表しています。
河童というと思い出すのが、某酒造メーカーのキャラクターのように愛嬌ある可愛いものです。ところが、本鍔の河童と見比べてください。江戸時代の河童は口が大きく、鋭い歯が光っています。目も大きく、怖いです。腕一面に鱗があります。足の指は四本。手の指数は確認できません。この姿ならば、誰が見ても立派な妖怪、まさに化け物ですね。
古来より、日本各地には河童伝説なるものがあります。それらを研究していく上で、この河童鍔は重要な資料となることでしょう。『刀剣界』を通して、全国の皆様に江戸時代の河童さんをご紹介できましたこと嬉しく思います。
【解説・河童について】
河童は、かつて北は青森から南は九州の鹿児島まで、全国の至るところの川に生息していたとされます。もともとは水神の使いであったものが、水神信仰が廃れて妖怪に化してしまったものだとも言われています。
古来伝承される日本の妖怪の中で最も有名なものの一つで、その姿がひょうきん、ユーモラスであり、世代を超えた親しみ深さがあります。
現在でも各地に河童信仰や河童伝説が数多く残っており、一面では「良くないもの=不幸」を水中に引っ張り込んで、そのおかげをもって「不幸退散」「幸福招来」がかなうと信じられています。ほかに商売繁盛・金運向上・水難防止・火災防止・縁結び・子授け・安産のご利益があるとも言われています。 (生野 正)
縦7cm×横6cm
《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第6号」(2012年7月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》