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私が出会った珍品〈二代忠広を支えた近江大掾忠吉に一目惚れ〉

私が出会った珍品〈二代忠広を支えた近江大掾忠吉に一目惚れ〉

刀 銘 肥前国住近江大掾藤原忠吉 刳物同国住忠長

 この忠吉との出会いは、平成十五年の秋も深まったころのことでした。
 友人の研師とともに京都旅行に行くことが決まり、旅の最後に彼の旧友である日本刀コレクターにお会いすることになったのです。
 こうして訪ねた刀剣収集家は八十歳くらいのご老人で、会社を経営する会長さんです。立派な日本庭園がある大きなお屋敷の門をくぐり、書院造りの客間に通されました。しばらくすると奥から大きな風呂敷包みを持って会長が現れ、私たちに自慢の一振だと刀について解説を始められました。
 鞘を払った瞬間に現れた表裏の濃厚な龍彫りを見るや、私は一竿子忠綱の作品かと思いました。茎には作者の銘と刳物同国住忠長の刻銘もあり、名品であることは言うまでもなく、私は絶世の美人だと一目ぼれしてしまったわけです。
 このようにして、この刀にご縁ができた私は、美人とのお見合いを繰り返し、ついに愛を実らせることになり、今では私の大切な愛刀となっています。
 本刀は、小板目肌よく詰んだ鍛えに中直刃を焼き、小足入り、匂深々として小沸よくつき、金筋・砂流しかかる。本作には忠長の手による彫物があり、龍の鱗などに研磨による減りは全く見られず、添え銘も貴重です。                 (生野 正)

刀 銘 肥前国住近江大掾藤原忠吉 刳物同国住忠長

《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第13号」(2013年9月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》

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