公益財団法人日本美術刀剣保存協会 「新作名刀展」表彰式開催、四年ぶりに正宗賞
公益財団法人日本美術刀剣保存協会 「新作名刀展」表彰式開催、四年ぶりに正宗賞
降り続いた長雨もやんで、受賞者の舞台に花を添えるかのように、つかの間の晴天となった六月十日、公益財団法人日本美術刀剣保存協会の平成二十六年度「新作名刀展」表彰式が同協会四階講堂において執り行われました。
今年の出品総数は六十点。内訳は無鑑査が十三点、作刀の部が二十九点、刀身彫の部が三点、彫金の部が十五点でした。
初めに主催者を代表して小野裕会長より挨拶があり、本展は刀剣文化の伝統技術の保護と普及、啓蒙という公益活動の目的の下に開催していることの説明がありました。
続いて、入賞者の表彰が執り行われました。
今年は正宗賞の授与があり、無鑑査刀匠の河内道雄氏が受賞しました。正宗賞は四年ぶりとなる偉業です。
日本美術刀剣保存協会会長賞は、作刀の部で松葉一路氏が受賞し、賞状と賞杯、賞金、玉鋼が授与されました。
次に、六名の優秀賞受賞者の表彰がありました。作刀の部で高見一良氏、曽根寛氏、加藤政也氏、彫金の部で柳川清次氏、川島義之氏、福興裕毅氏がそれぞれ受賞し、八ツ橋透鍔を製作した福興氏が代表として登壇しました。
努力賞は、作刀の部で十五名、刀身彫の部で三名、彫金の部で二名の合わせて次の二十名の方々が受賞。代表して短刀を製作した木村光宏氏が登壇しました。
作刀の部=宮下輝氏、高橋祐哉氏、小宮早陽光氏、北川哲士氏、森國利文氏、新保基治氏、安達茂文氏、高羽弘氏、杉山俊雄氏、渡邉徹氏、小宮治氣氏、満足浩次氏、松川隆氏、木村光宏氏、宮城正年氏
刀身彫の部=片山恒氏、柏木幸治氏、橋本太郎氏
彫金の部=山口石舟氏、入江万里氏
新人賞は作刀の部から一名のみの受賞となり、剣を製作して努力賞を獲得した満足浩次氏が、賞状と記念品を授与されました。
この後、審査員講評が行われ、審査員から受賞者に対し、作品の評価ポイント、良かった点、悪かった点、今後の注意していかなくてはならないところなどが述べられました。
作刀部門の上林勇二無鑑査刀匠は、昭和四十八年ごろのピーク時に比べると出品がだいぶ減り、技術レベルの低下を懸念していたが、案ずることなく今年も素晴らしい作品展になった、古名刀と自分の作品と比較し、勉強することが上達につながると述べられました。
刀身彫刻の部では無鑑査の柳村重信審査員が、今年は特賞が出ず残念であった、掟を踏まえた上で製作に励んでほしい、3Dの時代と言われるが伝統文化は人の手で継承されると述べられていました。
彫金の部では萩原守審査員が、刀は武士の魂と言われるが、刀装具はその刀を装うものであるから、品格と良識を兼ね備えていなければならない、作品を作る上で思い込みが強すぎると、間違えた鑑識眼になるので注意してほしい、古作を真似するだけでなく、人の心を打つ現代の名作を作ってほしい、などと講評を述べられました。
審査員講評に続いて、受賞者を代表し、松葉一路氏が答辞を述べられました。
なお、五月十四日の理事会において松葉氏に無鑑査資格を認定したとの発表があり、小野会長からの資格認定証の授与が行われ、式典は終了しました。
私は、昨年に続き新作名刀展表彰式の取材をさせていただきながら、時代にかかわらず、その作者に対して敬意を払う気持ちで作品に接していかなければならないという真摯な気持ちになりました。
どんな世界でも、技を究めることは容易ではありません。毎年作品を出品し、努力し続ける若い刀職者たちにエールを送りたいと思います。
なお、新作名刀展は刀剣博物館での展示後、致道博物館(山形県)にて八月一日~二十日、川越市立博物館(埼玉県)にて九月十三日~二十八日、それぞれ開催されます。
(生野 正)
《※本記事は、弊社代表が執筆し、組合誌「刀剣界 第18号」(2014年7月15日発行)に掲載された内容を再構成したものです。》